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阿弥陀岳南稜

060311_012 060311_015 060311_017 5月の北アルプスを目指し、その訓練として、お嬢様方4名と私kinさんで3月11日に阿弥陀岳南稜へ行った。翌日12日の日曜日は天気が崩れるという予報のもと、土曜日1日で抜け切って、行者小屋まで行ってしまおうとリーダーM_U子さんに進言し、出発時間を1時間早める。美濃戸口で仮眠して、3時起床4時出発するが、目指す舟山十字路が見当たらず迷走して30分タイムロス。

旭小屋から稜線にあがるが、雪地帯に入るとトレースが無くなる。まあそれでも稜線をはずさずに行くので間違いは起こりにくい。3時間ほどでアオナギのコルに到着。当初の予定ではこのあたりにテントを張れば、阿弥陀岳、赤岳、天狗尾根を一望でき見晴らしがすばらしい所だ。でも今日中に抜けてしまうので長く腰を落ち着けられない。先を急ぐことにする。暫く行くと50mぐらいに渡って雪尻が出ていた。天気が良くてどんどん気温上昇する。私はアイゼンにスノーシャットを付けていないため、雪団子がつきだし1歩毎にピッケルでたたきながら最後を歩いていたら、突然5m幅の雪尻が崩れ雪が谷底に落下していく。気がアイゼンの方に行ってしまっていて、雪尻の注意を怠っていた。私の前にはS_U子さんが歩いており2人乗ってしまった恰好だった。私は右足に荷重をかけようとした瞬間だった。もし荷重をかけていたら雪とともに奈落へ行ってしまっていたであろう。S_U子さんは事態をよく飲み込めていなかったような顔をしていた。腰が抜けたような恰好で右足をブラブラ空に浮かせながら暫く呆然としていたが、動こうにも体がすぐには反応しないような状態になっていた。やっと落ち着きもう一度谷を見下ろすと100mもスパッと切れ落ちて下のほうに樹林が見えるだけだった。気温の上昇と5人のトレースが誘引して最後に歩いていた私にロシアンルーレットがまわされた形となってしまった。切れて落ちるまで1秒とかからなかった。トレース上に右足に荷重をかけていれば、おそらく私とS_U子さんは、雪尻とともにこの世から消えていたであろう。やっと動けるようになり現場から逃げるようにして離れる。振り返るとそこだけが抜け落ちている雪稜が見える。今ここに書き込みながら思い返すだけでも下半身の大事なところが萎縮してしまう。雪尻は恐い恐いと知りながら、現実に目の当たりにして二度と安易に踏み込んではいけないと経験した。

やがてP3手前まで来てハーネスを装着し、登攀の準備をする。P3のルンゼは、ロープを出さずにフロントポインティングで2ピッチ分ほど登る。私は、以前に1回ここに来ているのだが、前回はこんなに雪がなくてルートが比較的見つけやすかったのだが、P3を越えて次のP4がどれなのかが、すぐにはルートファインディングができなかった。暫く右往左往していて、左に巻くと岩に「阿弥陀岳こっち」と印したステンレスプレートを見つけて、ホッとしたのだが、ずっと左にルンゼが見えるところまでトラバースをしなければならなかった。

近くまで行くと10mの岩稜帯の片面だけのゴルジュのようなところに1ヶ所スリングが垂れていて、そこをトラバースしなければルンゼに入れない。トップの私が、ロープを出してFIXする。5人が通過するのに、時間はかかるが安全を最優先する。ここを通過して最後のルンゼを登り込む。トップを交代しながら登り切る。もう少しで阿弥陀のピークに達する。そこにはいつも見ているあの岩稜帯の阿弥陀ではなく、そこにはすっぽり雪のかぶったピークが見え、雪尻がないかビクビクしながら周りをチェックした。時間は既に15:30となり暫く休んだ後、行者小屋へと下山を開始する。

下山は、中岳、赤岳が見える稜線づたいとなるが、上から見ると斜度35度はあろうか、上級のスキーコースのようで、それでいてトレースが全く無く、どこ歩いてもOKという状態だった。トップの私が100m下って、上を仰ぐとS_U子さんの腰の引けてこわごわとした足取りが見える。ちょっとやばいなあと思いながら下りてくるのを見ていた。途中10mトラバースをしなければならなくなり、キックステップで確実にけり込んで慎重に横切る。S_U子さんの番になって、丁寧に足を置いているのだがどこかおぼつか無いとおもいきや、ズルッと両手を挙げたまま滑り始めた。私は大声で「止めろ。止めろ。」と必死で叫んだ。柔らかい雪だったので5m程滑ったところでようやく停止した。その下は200mはあろうか、中岳沢に入り傾斜が幾分かは緩やかになっていくが、もしこのまま加速がつき出していたら、もう自分の力では止めることが出来なかったであろう。私も一瞬はもうダメだと思ったぐらいだった。まだ運が残っていたようなものだ。

ここからも丁度この直下にインゼルがあったので、ここにアンカーを作りロープを出した。50mいっぱいで斜度が滑らかになり、そこからはキックステップで踏み込めば下りられるところだったので、注意しながら下りることにした。

時刻は既に17:00を廻っていたが、やっと危険度の高い場所から離れたので少し休むことにした。ふと右の中岳の尾根上を見ると200mぐらい先になにやら黒い物体が動いている。最初はカモシカかなあと眺めていたが、よ~く見ると歩き方が熊のような歩き方だ。ワッー熊だ。こちらの5人の人間が騒いでいたので尾根向こうに姿を消した。もう冬眠から醒めたのだろうか。 こちらに来ないうちに先を急いで行者小屋へ急いだ。

10日 石神井公園駅22:30~kinさん車にて~美濃戸口着1:00(仮眠)

11日  起床3:00~美濃戸口4:08車で舟山十字路5:00出発~旭小屋6:20

立場山9:15~無名峰11:00~P3超える14:15

山頂15:30~行者小屋着18:00(テント泊)

 12日 起床6:00~出発8:32~美濃戸口着10:50

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コメント

阿弥陀南稜はいろいろな意味で私に課題を投げ掛けて来た。
これからの活動に向けての良い教訓となるべく大変意味深い経験となった。アルパインの厳しさや難しさ、それから素晴らしさを強く感じた☆

投稿: ico☆ | 2006年3月13日 (月) 12時57分

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